「医者にはモラルがない」と発言したために叩かれた首相がいたが、モラルの意識が低い事は間違いないだろう。それは、単純に医者のせいではなく現在の社会制度に大きく依存しているので医者だけを攻撃すれば良いと言う話ではない。そもそも、現在医者の数が少ないのは、医者が増えれば医療費が増えるという愚かな発想を厚労省が持っていて、開業医の方は医者の数が増えれば自分の取り分が減ると言う気持ちを持っていた。医者と厚労省の思惑が医者の数を減らす方向で一致したのだから、問題が起こる事は始めから分かり切っていたのだ。
それでは、どうすれば良いかと言う話になるが、マスコミで出てきているような案では何の問題解決にもならないだろう。そもそも、開業医が増え勤務医が減ってしまった原因は現在の学校制度にある。医学部に入るには一般家庭では到底払えない授業料を納めなければならない。そんな金額を払えるのはごく一部の富裕層に限られる(開業医は当然その中に含まれる)。要は、志を持っていても医者にはなれないが、金を持っていれば医者になれるという構造が出来てしまっているのではモラルなど育つ筈も無い。医者になるために大金を注ぎ込んでいるのだから、元を取ろうと思えば、なるべく楽に儲けられる開業医になろうとするのは当たり前だし、面倒の少ないジャンルで開業するのは当然だろう。
少子化で将来顧客の減りそうな産婦人科や小児科のなり手が増え、救急医療の医師が人手不足にならなければそれこそ不思議なのである。それでは、どうすれば良いのだろう。否定しているだけでは始らないので少しばかり考えてみた。
医療制度改革案
医学部定員枠の拡大:医師会と厚労省の思惑で医者の数を増やさないようにと定員を減らしたのが医師不足の原因だとマスコミが騒ぐため、定員を増やそうという案が出ているが、単純に枠を広げればそれだけバカな医者が増えるだけの愚策である。枠を拡大するだけではなく、私立も含めた医大は親の資産(所得)を基準に学費を設定し、貧しくとも優秀であれば国費で医者になれるように制度化する。但し、防衛大学ではないが勤務医として働く事を義務付けるようにすれば良いのである。戦前の師範学校と同じように人の命を預かる職業に就く人間を国が育てるのは当然のことなのだ。
健康保健制度の変更:医療費が拡大している理由は、診療報酬よりも薬価に負っている部分が多い。だから、ロクに聴診器も当てずに風邪だと診断するような内科医が成り立ってしまうのだ。薬価が下がったとは言え、市販薬を買うよりも処方薬の方が安上がりだと、まともに診察もしないのを承知の上で医者に掛かるのだ。病院で待たされるのを我慢出来るのは、その方が安上がりとわかっているから。厚労省の天下り先(医者にはなれないから)である製薬会社を儲けさせるために作られた保険制度は一から組直す必要がある。診療報酬は、生死に関わる度合いで決め、内科よりは小児科、小児科よりは産婦人科、産婦人科よりは外科と基準額を変える(内科医と外科医では倍以上の差を付けても良い)べきだろう。その上で、診療費の個人負担額は全て1割とし、薬は全て実費(高齢者や社会保障を受けている人は無料)で薬局で購入する。そうなれば、効果がないのに高い薬は淘汰され、無駄な薬に金を取られることもなくなるのだ。同時に市販薬には全て処方薬と同じ成分を使って良いようにすれば、市販薬のレベルも上がる。薬代を健康保険がカバーする事が無くなれば医療制度が破綻する事などありえないのだ。
治療薬の認可制度の変更:健康保健制度で触れたように、製薬会社は厚労省の天下り先。海外で認可済みの治療薬であっても国内に同様の効果を狙った治療薬がある場合に認可されない(棚晒し)事が多い。海外で認可されたものを無審査で認可しろとは言わないが、海外で認可されている治療薬はすぐに治験を行って認可のスピードを上げるべきである。抗がん剤や日本では治療薬の存在しない特殊な病気に対する治療薬が海外にあるのならば認可対象として治験を素早く行えば良いのだ。勿論、国内で開発された薬も同様でどこかの製薬会社のために新薬の認可を遅らせるような事があってはいけない。
結論:医者のモラルが低いとすれば、それは医者になるのにお金がかかり過ぎるからだ。お金ではなく能力と適性のある人間が医者になれる制度を用意すれば、医療は変わる。お金さえ出せば医者になれる(国家試験に通ればだが、日本の国家試験は海外ほどレベルが高くはない)から、ロクでもない医者が増えるのだ。医療問題の本質は数ではなく質の問題。医者にモラルが無いのではなく、モラルが無くても医者になれるのが問題なのである。
水曜日, 12月 31, 2008
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