金曜日, 11月 08, 2019

UWBで何が起こるのか?

AppleがiPhone 11に突然搭載したために新しい技術と考えられても仕方のないUWBは2003年にアメリカで発表され、技術者の間で大きく騒がれたのに(こんなの上手く行きっこないも含まれる)Appleが近距離通信をBluetoothに絞り込んだことで檜舞台を派手に飾ることもなく2012年の段階でもうニッチと言われていた技術。現にAppleはBLEをiBeaconとして使い始め完全に引導を渡されたと考えられていた。技術的にはBluetoothよりも省電力性、通信容量とも桁違いに優れていることは当時から分かっていたが如何せんチップの小型化、低価格化で全く歯が立たなかった。それがU1と言う新しいチップの形でiPhone 11へのUWBの採用。一般人には全く知られていなかった技術が一躍檜舞台に登場となった。まさにUWBびとっては晴天の霹靂だったのだ。

今では使われていないことの方がおかしいUSBも規格が決まった当時はバスパワー給電が可能だったり抜き差しが自由だったりと当時のPCメーカーの常識では到底受け入れられないものだったがAppleがUSB以外の外部アクセスポートを載せないと言う大博打で打って出たiMacの大ヒットがあってこそだったことを知らない人も多いだろう。本来であればiPhone 11の発表で大々的にアナウンスされて良いはずのUWBの標準搭載。まるでAirDropを便利にするために搭載したようにしか触れていなかったが、今後一番重要になる技術をスルーしたのはまだ全てのコマが揃ったわけではなかったからと考えるべきだろう。
UWBに関してはDENSOはキーレスエントリー用、Samsungは家電のIoT基盤技術、SONYなどの多くの家電メーカーも実はどうにかして取り込もうと研究開発を続けているが大々的に発表していないということはまだ明確な使い道を見つけていないからだ。UWBには大きく二つのコンソーシアムが存在し、そのどちらにもSONYやSamsungなどのメーカーが参加している。Bluetoothよりも前からUWBの研究開発を続けているのにどちらのコンソーシアムにも参加していないAppleがUWB専用のU1チップをいきなりiPhone 11に載せてきたことで業界は慌てふためいているに違いない。AppleはUWBで何をしようとしているのか、今回は妄想も含めてその辺りを書いてみたいと思うのだ。

UWBで何が出来るのか
その1:AirDrop
別にたいしたことではないのだが今回の発表ではこれしか触れていない。例えばパーティーなどでiPhone 11ユーザーで個人情報を公開している場合にはiPhoneを向けた先の人が誰かを知るアプリなどを作ることができる。目の前にいる人とのデータ共有は同じアプリを使っているならメールやメッセージなどインターネットを経由するアプリを使わずに可能にある
その2:Find My
Apple製品であれば「探す(Find My)」で家の中のどこにあるかをバルーンで正確に教えてくれる。U1チップを搭載した分失防止タグが発売さればネットワーク接続機能を持たない様々な物の位置情報を知ることが可能になる。既にBluetoothを利用したタグは存在するがそのバッテリーの消費量が全く違うのですぐに電池切れになるようなことがない。
その3:HomeKit
AlexaやGoogle Assistantで家電をコントロースするにはインターネット必須だがUWBではインターネット接続なしにiPhoneなどを向けた先のデバイスがUWB対応であればその装置のコントロールに必要なアプリが自動で立ち上がり操作を促すことが可能になる。
その4:AirPlay
AirAirPlayが可能なテレビやスピーカーなどのデバイスならそちらにiPhoneやApple Watchをそちらに向けるだけでAirPlayがスタートさせるなどの可能性がある。受けて側のデバイスには強力なCPUやストレージがなくてもUWBだけでストリーミング再生が可能になる。
その4:CarPlay
自動車ドアのロック解除、エンジンの始動などがUWBで可能になる。そのセキュリティレベルはBluetoothやWi-Fiを利用したものよりも高くなりすましを防ぐ事が可能な上車を離れるだけで自動でロックをかけることも可能になる。

結論:世間は5Gだけに気を取られているがニッチに過ぎなかったUWBが今後、近距離通信のキーとなる可能性が高くなってきた。そんな事はないと言う意見もあるだろうがiMac発表以降ハードウェア仕様のデファクトを再定義し続けてきたAppleが動いたことを軽視してはいけないのだ。

水曜日, 11月 06, 2019

AirPods Proは何が違うのか?

Appleの子会社とは言えBeatsが新製品を出してもAppleのように乳飲み子から知っているわけではないので世の中が大騒ぎになることはありませんが、ことAppleとなるとプレス向けの発表会さえ行わなかったのに既に年内に手に入れるのが不可能になりそうな売れ行き。私があれほど買ってはいけないと書いたのにと思わないでもないですが読んでる人がほとんどいないので仕方がありません。時計と同じようにオーディオは奥の深い世界。音の好みは千差万別。超高額のオーディオ機器を買ってきたわけではないので偉そうなことは言え獲ませんが高音よりも低音がしっかりしている方が好きなのでキンキンするような音を売り物にしているものは苦手です。その上、上を見たらキリがないのがこの世界。セットで数千万もするようなオーディオシステムで音楽を聴いている人にとってAirPods Proなど眼中にはないでしょうからそんな特別な方々は別にしてAirPodsdで十分満足だった人にとってAirPods Proは魅力いっぱいの商品です。27,800円という価格は一見高いですがワイヤレス充電可能なケースがついているのでAirPodsのワイヤレス充電タイプとの差はたったの5,000円。価格帯がほぼ同じで音質はAirPods Proより上との評価のあるSONYのWF-1000XM3はワイヤレス充電ではないので結構お買い得な気さえします。

と言うわけで今回は一通り信頼のおける方々のレビュー記事が出てきたのでそこから得られた情報をベースに先を進めたいと思います。

音質
好みの問題が大きい世界なのでAirPodsの方が好きと言う人もいれば物足りないと感じている人も当然います。但し聞くに耐えないと言うものは一切なかったのでイヤフォンとしての評価は及第点を取れていると言っても狂信者以外に殺されるようなことはないでしょう。
ANC(アクティブ・ノイズ・キャリブレーション)
単純に遮音性だけを問えばもっと強力なものがあるようですが、密閉による圧を感じない、風切音や振動音も軽減されるなど現行の他社の製品よりも一歩以上先を行っている部分もあります。それは特定の周波数帯ではなく全帯域にノイズリダクションが働いているからなのでしょう。イヤフォン内部のマイクは耳穴の反響音を捉えて最適なイコライザーチューニングに使われるアダプティブイコライゼーション機能との併用で遮音性はトップクラスのようです。AirPods Proの遮音性はイヤフォンではなくBoseのヘッドフォンQuiet Conmfortレベルとのレビューもあります。その上で特筆すべきは普通のイヤフォンだけではなくANCでもどうしても問題となるイヤフォン装着時にものを食べたりするとその咀嚼音がかえって気になる(咀嚼音が骨伝導でイヤフォンに伝わり耳に届く)問題がAirPods Proでは軽減されるようなのです。同様に風切り音も軽減するようです。
実装技術
AirPodsよりは重くなっていますが他社の製品に比べ重量が軽く、密閉性が高いのに装着感は他の製品よりも高い。これはApple独自開発のSoCであるH1とそれをSiPにしたAppleの実装技術が他社の追随を許さないレベルにある賜物でしょう。
レイテンシ(音の遅延)
外部マイクで環境音を拾いその音の逆位相の音をスピーカーから再生することによって聴こえないようにするのがノイズリダクションの原理。環境音を拾う>逆位相の音を作る>逆位相の音を出すの処理を行うので当然処理時間が発生しますが、AiPods Proはほぼそれがないと思えるくらいに短い。これはiPhoneからBluetoothで音声を飛ばす時も同様でビデオ再生で映像と音声にズレを感じるようなこともないし音ゲーでもほとんど遅れを感じないようです。逆位相の音を作るために外部マイクで1秒間に200回も音を拾っているようですがH1の処理速度が驚くほど速い上にソフトウェアが優れているお陰でしょう。
Transparency mode(外音取り込み)
あえて日本語にせずTransparency modeと呼ぶべきAirPods Proの外部音取り込み機能。このモードでは密閉性の高いイヤフォンで耳道を塞いでいるにも関わらず、まるで何も付けていないように外の音を自然にイヤフォンで再生してくれるようです。両耳に装着している状態でまるで何も付けていない時のように音の大きさや方向を正しく判断できるレベル。片耳からAirPodsを外した時に自動的にANCからTransparency modeに切り替わりますが、その時AirPods Proを付けたままの耳にも自然に周りの音が聞こえてくるとレビューされています。SONYのWF-1000XM3は片方を外してもANCモードのままでかえって周囲の音を聞きづらくする結果になってしまいます。この辺りはANCが音質重視なのか実用性重視なのかの大きな設計思想の違いに負うところでしょう。
耐水性
IPX4なので防水ではありませんが洗濯機で洗いこんだり付けたままで海に潜ったりせず多少水しぶきを浴びたくらいでは壊れません。もちろんびしょ濡れのまま使えるわけではないので対汗・耐水とは言え滝のように耳汗が出ると言う方にはお勧めできません。まあ、そう言う方はどんなイヤフォンも使えないはずです。と言うわけで一見地味ですが現状有名どころでANC機能付きのイヤフォンで耐水仕様になっているのはAirPods Proだけのようです。
充電
これもAppleが派手に主張していないためスルーされがちですが前述の通りAirPods Proのケースはワイヤレス充電対応です。SONYのWF-1000XM3は大きいケースの割に(これはPowerBeats Proも一緒ですが)未搭載の機能なので売りの一つになるはずです。ケーブルはUSB Type-CのLightningに変更。アダプターは付属していないのでUSB Type-Cのアダプターを持っていない人は付属のケーブルではなくiPhoneやiPadのケーブルを兼用しましょう。

他にもSiriが使えるなどいくつも有用な機能はありますが、それはAirPods 2ndやBeatsのPowerBeats Proでも出来る事。そしてオーバーイヤータイプが欲しいなら同じくひっそりと発売開始になった Beats Solo Proがあります。AirPodsはアンチ・ノイズ・キャンセリングじゃないからと馬鹿にされていた方は一度視聴してみて下さい。

結論:AirPods Proは、ノイズリダクション機能やヒアラブルデバイスとしてはピカイチ。とにかく良い音がと聴きたいんだと言うなら他の選択肢もあるでしょうが使いやすさや取り回しの良さも重要と考えるなら魅力的な製品になっています。