水曜日, 6月 10, 2015

Appleが先行していることを示したWWDC

ハードとOSの両方を持っているAppleはハード先行、ソフト先行とその時に応じてどちらを先に出すかを自由にコントロールが出来ます。Steveが復帰した当時はまだOS Xは存在せず他社のPCと代わり映えのしない事務機的なMacしか存在しませんでした。そこで打ち出したのは家電のように家庭内で使われるPCとしてiMac。Macはデジタルハブなのだと打ち出して家庭に向けてリリースした訳です(ハード先行)

未だ、レガシーなMac OS出しか動かない製品しかない段階でOS Xをリリース。クラシックモードを設けることで古いMacでも動作させる形でハードもソフトも揃っていないOS Xへの移行完了までの時間稼ぎを行いました(ソフト先行)

デジタルハブと謳いながらデジタルビデオくらいしかまともにMacと連携が取れるデバイスが存在しない時に登場させてiPod。CDをリッピングして全てをポケットの中にと宣言してデジタル・ミュージック・プレイヤーを利リス。発売開始当時はApple信者のアーリーアダプターくらいしかサイフの紐を開く人はいず大成功とは言えない状況(ハード先行)

価格も高かったため大して数の出ていない状況を逆手にとってiTunes Music Storeを開始。Windows版のiTunesを用意したことでそれまでとは打って変わって他のミュージックプレイヤーを駆逐することに。僅かな手間で音楽を買うことが出来るプラットフォームを用意したことで音楽業界の構造を変革させました(ソフト先行)

Intelチップ搭載のMacが存在しない状態でIntel版のOS Xを発表。ソフトもハードも対応するものが無い状態にも関わらずPowerPCに未来はないと判断して準備(ソフト先行)

アプリの入れ替えも出来ず通信速度も2Gしかない状態でiPhoneをリリース。スマートフォンのインターフェイスはどうあるべきかを示す意味合いの方が強かった(ハード先行)

大した数が売れなかった初代を僅かな期間でアップデートさせ同時にiTunes Music StoreをベースにしたApp Storeを準備。既にスマートフォンの中では一番多くの台数となっていたiPhone市場に向けて多くのサードパーティが名乗りをあげ一気にiTunesがエコシステムとなる(ソフト先行)

既に存在するiPhone用アプリがそのまま使えると言うアドバンテージを有効に活かしてiPadをリリース。スマートフォン用しか存在しないのに画面サイズがまちまちのためまともに使えるアプリがないAndroidタブレットにとどめを刺すことに(ハード先行)

Androidベースの全然売れないスマートウォッチ(OSが時計サイズ用のインターフェイスではないのだから当然)で苦戦している中、満を持して発売が開始されたApple Watch。Androidのスマートウォッチとどこが違うのよと書かれているけど既にインターフェイスが段違いで使い易いとの評価の方が多い(ハード先行)

今回のWWDCのKeynoteスピーチで発表されたのは3つのOSとApple Music。3つのOSがiCloudを核にシームレスにそれぞれを補完し合うエコシステムが秋に登場することを宣言。細かな開発キットには触れずハードの発表もなしのため全く驚きの無いWWDCだと勘違いしている人もいるけどAppleが現在の技術で出来る最高の環境が整ったことを明らかにした開発者にとっては重要なWWDC。発売後僅か一月半しか経過していないApple Watchが秋になればAndroid Wearとは別次元になることが明らかになったし、今回の各セッションで次に出てくるApple TVなどのハードウェアやサービスのための準備が整えられた(ソフト先行)

結論:ハードとソフトの両方を自社で開発しているからこそ、自分たちが計画した通りに製品とサービスが提供可能。だからこそハードとソフトウェアの開発に他のどこよりも十分な時間を掛けることが出来るためにユーザーインターフェイスの作り込みは追随を許さない。新製品に新しいOSを搭載可能なことと旧モデルに最新のOSをインストール可能なことは他が真似することが出来ない圧倒的なアドバンテージなのである。AndroidユーザやWindowsユーザには理解出来ないだろうけど。

月曜日, 6月 08, 2015

Androidはそろそろどうにかならないのか?

ウェアラブルデバイスの端くれを販売しなくてはならない立場に立たされて実感するのはAndroidという確たる実態のない製品群に対応しなければいけないジレンマ。

Androidユーザーはまるで自分の使っている端末がデファクトだと考えているようだがiOS端末とは違い正直な話、間違いなくOSのアップデートがリリースされるNexus以外はその他大勢に過ぎないのである。

Androidのシェアが9割近くあるのだからサポートするのは当然と青筋を立てる人がいるが、OSレベルとハードの両方で完全にサポートされている製品は未だにシェアの主流派ではない。事情を分かった上で文句を言っている人もいるがBluetoothとBluetooth LEの違いも分からずサポートをしないことに不満を持っている人も多いだろう。Bluetooth LEの仕様公開はBluetooth 4.0からだから大分以前なのだがAppleはiPhone 4sから対応していたのでかれこれ4年になるがAndroidでまともに対応し始めたのはつい最近。OSレベルで完全準拠になったのはAndroid 4.x以降。勿論、ハード側もBluetooth 4.0していなければBLEでは使えない端末だ。

それ以前のBluetoothは、Classic Bluetoothと呼ばれ予め定義されたプロファイルで接続を規定されている規格で言わばケーブルをなくした接続方法に過ぎずイヤフォンやマウス、プリンターの接続方法はあったが自由に接続出来るデバイスの種類は限られていた。そして常に通信しっ放しのため消費電力も大きくモバイルデバイスで使うような規格ではなかったのだ。

と言う訳で我々が製品開発を開始した当時BLEを選択すれば、自ずと開発対象はiOSデバイスしか考えられなかったのである。いくら文句を言われたって4,000種類もあると言われるAndroid端末で検証作業など現実的ではないと分かってもらえるだろう。

結論:漸くAndroidも4.3以降が半数となってきたその中でBLE4.0準拠の端末がどれくらいあるのかは定かではないが今後はAndroid用のアプリも準備する段階になったようである。それでもメインターゲットがiOSであることは間違いないのだが。

Appleの深遠なビジネスモデル

通常は売れなくなったらすぐにモデルチェンジをして中身には大して違いのない新製品を投入がメーカーの鉄則。最近はさすがに余裕がなくなって四半期ごとに山のようなどうでも良い製品を出すところは減ってきたが(Samsungはまだ余裕があるのか知らないがすぐに新製品を投入するw)、それでも半期ごとに中身はさした違いがない前のモデルとは似ても似つかない新製品を投入する。

前のモデルは性能差はほとんど無いのに僅か数か月でタダ同然になるのだから消費者は新製品に飛びつくことはなく、当然メーカーは取らぬ狸となってしまい業績が上向くことなど無い。それが現在のスマホやタブレット市場なのである。

そんな中唯一莫大な利益を上げているのがApple。筐体デザインは基本的に2年間大きな変更を行わない(同じ金型を使っているので製造原価が安く出来ると勘違いする人もいるが金型など使わず一つ一つ切削で作っているのでコスト削減のためではない)。

Appleが2年間大きなモデルチェンジをしない一番の理由は次の買い替えの時に間違いなくApple製品を購入して貰うため。日本のキャリアは二年縛りだが、これはアメリカも基本的に同じ。だからこそアメリカや日本ではiPhoneが圧倒的に売れているのだ。

では何故Appleは2年間筐体のデザインを変えないのだろうか。Appleは新製品が登場するその日迄殆ど価格は変わらない(他の製品のように数か月で投げ売りなど起こらない)。もうすぐ新製品が出る頃に買った人に取っては目も当てられない状況だがフルモデルの時期でなければ見た目で旧モデルを買ったとは分からない。2年間使い続けるとしたら次は間違いなくフルモデルチェンジがリリースされている。

結論:他のメーカーはユーザが自分の使っているモデルが型落ちになる残念感をもっと真剣に考えるべき。四半期の売り上げしか考えていないから次に送って選んでもらえないのである。

木曜日, 6月 04, 2015

インターフェイスデザインは意匠ではなく科学

Appleの製品は、一般にデザインが優れていると言われている。口(実際には頭)の悪い連中は、スペック的に他社に負けているApple製品が売れるのは格好が良いだけだなどと言っているようだが、それは未だにデザインを意匠の世界と勘違いしているからである。

AppleはMacintoshデビュー前からユーザインターフェイスのガイドラインを設けていたが、これはデザインを規定したかったからではなくユーザインターフェイスを統一させたかったからである。当然起こり得るヒューマンエラーを最小限にするためにインターフェイスでカバーする。そこには自ずと厳格なルールが必要となる。そのためにインターフェイス設計にはデザインだけではなく認知科学(認知心理学だけではない)の知見も含まれていた。

CADなどで使われるUNIXマシーンで使われるマウスボタンは3つが当たり前だったのにMacintoshでは一つにしたのも押し間違いを発生させないためだったし、正確にポイントするためのマウスのポインティングポイントやダブルクリックの速度の遊び(設定情報との許容誤差)に他のシステムよりも大きな幅を持たせたのもヒューマンエラーを減らすためだった。単に正確に動くだけだと目的のポイントを上手くクリックすることが出来ず操作することがストレスを増やすだけの道具になってしまう。それが結果的にユーザにやさしくないデバイスと思われてしまう原因なのである。

最近も液晶のエッジを曲げてスペックでは伝わらないところにこだわった製品を開発したところがあったがそのためにお金を余分に出して求める人はいなかったようで発売開始後一月も経たずに値引きせざるを得なくなったようだ。Appleの製品に奇をてらったデザインがないのはそんなことをすれば使い辛くなるからなのだが他社はAppleのデザインをパクるかどうしてそんなことしちゃうのよが多く、それも一代限りで終わってしまいUI/UXも全く統一感を置き去りに…

結論:Apple製品は見た目だけではなく使い心地も含めて製品をデザインしている。それは使った時にユーザがどう感じるかが一番重要なことを分かっているからなのである。