火曜日, 12月 23, 2008

「すり合わせ」の神話?

 世界のトヨタの”ものづくり”が破綻したのを良い事だとおっしゃる方がいる(池田信夫氏だ)。これからの製造業はすり合わせではなく組み合わせだというのはごもっともだが、トヨタがすり合わせ型のものづくりだと決めつけるのは如何なものだろう。中国で上手くやっている三菱は完成車ではなくエンジン供給で利益を上げている。逆に言えば中国の自動車メーカーは三菱のエンジン供給が止まれば自動車の生産が行えなくなってしまう。全メーカーのエンジンが共通化されることがモジュール化の究極の形だろうが、そうなれば最悪の事態をむかえるに違いない。根本的に改革原理主義の池田氏は、合理がどれだけ非合理かを未だに理解していない。

 トヨタが今回失敗したのは、モジュール化に対応できなかったからではなく、売り安い北米市場にシフトし過ぎたからに過ぎない。池田氏は本来関係のないものを自説の証拠として持ち出しているが、それはいただけない。モジュール化は必要であるが、それは池田氏の主張するようなものではない。プログラミングなどはモジュール化(正しくはObject化)すべきである。これは、AppleとMicrosoftのOSを比較すれば一目瞭然だが、自動車レベルになってくるとそんな簡単な話ではない。グローバルな水平分業など行き着く先はコンピュータ業界であり、今のPC業界を見てみれば分かるように決して幸せな世界はやってこないのだ。

 Appleもモジュール化は進めているが、それで成功している訳ではない。モジュールを結びつけるソフトウェアの部分(当然デザインも含む)にとことん拘っているからであって、仕様を満足させるために最適の部品を調達している。つまり、モジュールが大事なのではなく”ものづくり”を大事にしているからこそ上手く行っているのだ。

結論:小泉改革に反撃し始めた中谷巌を攻撃するためにトヨタを持ち出すなど、みっともない話である。トヨタや中谷巌を擁護する訳ではない(私のブログの読者ならご存知の通りだと思う)。間違った論点で批判するなと言いたいのだ。

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