金曜日, 12月 08, 2006

真実と事実 〜第十六条〜

 また戦争だ。もう飽き飽きだろう。それでも開戦記念日だから行ってしまうのだ。

太平洋戦争
定説:鉄(屑鉄)と石油の輸入を止められた日本は、インドネシアなどの南方を支配下に置くことによって打開を図ろうとした。そのためには太平洋に影響力を持つアメリカと、南方を占領しているイギリスを叩く必要があり、マレーシアとハワイを同時に叩くという奇襲攻撃を仕掛け、これがその後の大戦へのきっかけとなった。日米開戦は日本が生き残るためには絶対に回避できないものであった。
事実1:当時制海権を取れる海軍を保持していたのは日英米だけだったが、英米と日本の間には大きな開きがあり、帝国海軍が太平洋を抑えることは不可能なことを帝国海軍は知っていた。
海軍の本心:勝てないことは一番分かっているが軍縮による予算削減は避けたかった。
事実2:満州事変は成功したが大陸侵攻にはてこずり、兵力削減や撤兵を考えていた。石油禁輸による物資不足を撤退の理由としたかった。中国を支配するのは無理と考えていた。
陸軍の本心:いつまで立っても埒が明かないことは分かっていたが、撤兵をすれば予算を削られ、また予備役が大量に発生し不満が高まることを恐れていた。そのうえ、陸軍の失敗を指摘されるのを恐れ、海軍の応援が得られないからという逃げ道が欲しかった。
事実3:近衛文麿は軍令部と海軍が対米戦争を避けたいのに、それを口の出せない理由を知っていた。そのためには陸軍に先に中国撤兵をさせなければいけないことも分かっていたが出来なかった。
近衛の本心:陸海どちらも米英を相手に戦争を行なえる状態でないことは分かっているので、説得に失敗した時に天皇の裁可を内大臣に取り付けてもらえば良いと考えていた。
事実4:敗北する恐れの高い開戦を天皇に助言しなければならなかった。
木戸の本心:近衛から天皇の裁可を依頼された木戸幸一は、二・二六事件の粛軍の実行者であった自分が撤兵による責任を取らされるのを恐れて言い出すことが出来なかった。
事実5:海軍は開戦できない理由を海軍力不足と言われたくなかった。
事実6:陸軍は中国の失敗を戦略のなさと指摘されたくなかった。
事実7:近衛は開戦阻止の失敗を自分の所為だとは認めたくなかった。
事実8:木戸は自分が粛軍の責任を取らされたくなかった。
私の視点:結局戦争の原因は突き詰めてみれば、お互い自分のメンツを潰されたくないというそれだけだったのだ。こんな状態で自分のミスや力不足を相手のせいに転化して悪いのはうちじゃないと責任を回避したために戦争を回避できなかっただけなのである。その結果が国民を死のどん底に落としたのだから、武士道が聞いてあきれる。

結論:
結局、誰も積極的にアメリカとの戦争を考えていなかったことが、日米開戦の最大の理由だ。戦争を想定していなかったからアメリカの実状を知っていたのはごく一部の人間だけだった。それは仮想敵国だったソ連と比較してみれば明らかだ。ソ連は仮想的だったためその実力は研究しつくされ、その結果戦うのは時期尚早ということで陸軍は動かなかった(ノモンハンを見ればそれは明白だ)。ようするにアメリカと戦う気が全く無かった(言葉としてはあったが、そんな気は誰もなかったのだ)ことが太平洋戦争の本当の原因だったのである。勝ち目がないことくらい軍人なら分かっていたのだ。

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