金曜日, 4月 04, 2008

Appleの戦略から学ぶこと

 現在のAppleの戦略とは、世の中の常識を越えた(逆らった?)ところにある。勿論逆らわずに定石通りにやっていることも多いが、将棋やチェスと違って世の中で定石と言われているものなど、偶然成功したためにそう考えられているだけでもっと良い方法に思い至らなかっただけの話なのである。

戦略
その1:弱点はセールスポイントである。
コストやサイズを考え液晶を搭載出来なかったiPod shuffle。シャッフルして聞くためのプレイヤーを提案したのだと言い張る。新しい音楽の聞き方がシャッフルだと洗脳。シリアルポートやSCSI、フロッピーをやめたiMacをPCユーザは批判したが、結果的にiMacが唯一のインターフェイスとしたUSBが標準になりそれだけで事足りる世の中になってしまった。計測機器などの一部の特殊な機器は未だにシリアルやパラレルが必要かも知れないが、元々そんな用途でMacが使われることなど無かったので関係なかったのだ(あったとしても無視だろうが)。MacBookAirも有線LANを取り去りケーブルはもう必要ないことをアピール。
その2:イメージを植え付ける。
マニラ封筒からノートPCを取り出すなど機能競争している業界からは、それがどうしたと突っ込まれるはずだが、それ位に薄くて軽い(実際はそうでも無いかもしれないが)PCだとイメージを刷り込む。同様に何度モデルチェンジをしてもiPodはiPodと誰にでも分かる共通のイメージを持っている。新製品が出るたびにインターフェイスが変わってしまう(フォーマットまで)どこかの国のオーディオ・メーカーとは大きな違いだ。コマーシャルでは、”It's a SONY"などと言っているが、メロゴを隠したら何処のメーカーのものか分からないような商品を作ってはいけないのだ。もしも、私がSONYの社長なら初代Walkmanの形(勿論サイズは小さい)にして、カセットの変わりにメモリスティックをカシャッと入れるWalkmanを作る。何故なら何処からどう見たってSONY製だと分かるからだ。イメージとは、iconなのだ。
その3:喧嘩になったら大成功。
Appleだけの話では無いが、Jobsに喧嘩を仕掛けたら相手に塩を送ったことになってしまう。イギリスのApple(レコード)は、放っておけば良かったのに商標権で訴えたためにAppleに商標権を奪われ、商標をライセンスして貰う立場に替わってしまった。Pixarとの契約更新を拒否したディズニーは首謀者だった会長がクビになり、揚げ句の果てにアニメ部門をPixarに乗取られる結果に(買収をしたのだが結果的にJobsがディズニーの筆頭株主になってしまったのだ)。
その4:ハードウェアなんて関係ない。
数多のメーカーがハードウェアにどれだけのオプションを組み込むかに腐心している中Appleだけはハードウェアに縛られないシステムを構築している。コンピュータのメインであるCPUが全く設計の違うものなのにどちらもサポートするOSを行きなり出してきたり、1年前に使い道が不明瞭で魅力も無かった(VGA、ステレオ再生だった)AppleTVをハードウェアの追加無しにシステムアップデートだけで全くの新製品(720pHD、サラウンド)に化けさせたりとデジタル時代を制覇するのはハードウェア思想では無くソフトウェア思想であることを証明。特定機能を持ったハードウェアが別なものに化けることなど無いが、ソフトウェアならば如何様にも化けるのだ。この当りはQuickTimeに始ったのである。
その5:ターゲットを絞り込め。
製品構成を最小限にしているだけでは無く、ターゲットとなる顧客も絞り込んでいる。お陰様(自分の会社でも無いので変なのだが)で、まもなく1億5千万に達するiPodの販売数量。1億5千万人のユーザ層を考慮したらこんな大ヒット商品には絶対になら無かっただろう。MacBookAirの発表会後の記者会見で「ハードディスクの容量が少ないのではないか」という記者の質問に、Jobs は涼しい顔で、「君のような人は Air を使わなければよい」と言い放ったらしいが、これが全てを現わしている。当然、次のMacBookAirのハードディスクはもっと大きくなるから、質問の意味は無いし、今すぐ容量の大きなマシーンが欲しいのならばMacBook Proを買えば良いのだ。良く個人に合わせるなどと言う人がいるが、世の中にいる人はまさに千差万別。そもそも既製品を用意して個人に合わせられる筈などないのだ。本当に個人に合わせたいのならばオプションでどのようにでも出来るベースとなる製品を出すしか方法は無いのである。個人に合わせると言うのはターゲットを広げることでは無くターゲットを絞り込むことなのだ。

結論:大きな短所は大きな長所、喧嘩と言うのは交渉の一手段、ターゲットが狭ければ狭いほど吸引力が増す、イメージは変えない、物に囚われるな。Appleの戦略から導き出される法則なのである。

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