金曜日, 1月 29, 2010

技術者の持つ誤解

 世の中には技術者が作りたいものを出させてくれなかったから、うちはAppleに負けたのだと言う人達がいる。彼らにすればAppleに負けたのは作りたいものを作らせてくれなかった経営者が悪いと言いたいのだろうが、それは大きな誤解だ。
 
 私の持論は、「技術者に物づくりをさせてはいけない」である。誰が作るのだと言われたら職人だと答える。何をバカな。ホンダにしろSONYにしろ技術者の技術力で大企業になったではないかと反論する人達には、それじゃ本田宗一郎は単なる技術者でしたか?と逆に質問したい。技術者と言うのは学者と同じでユーザ視点で物づくりをしない人達である。自分が欲しい物を作るだけだ。それが、世間のニーズとマッチすれば大ヒットになるかもしれないが、そんなことなど滅多にないのだ。
 
 Jobs以前のどうしようも無かった時代のAppleは、経営陣が物づくりのコントロールを失い技術者に好きなようにMacを作らせていた。出来上がった商品は技術者の自己満足以外の何物でもなかった。それがあまりに過ぎたために自社でOSを完成させられない体たらくに陥ったのだ。Jobs復帰後に真っ先に行った事は技術者に最終製品に対して一切の口出しをさせなくした事である。技術者から新しい技術の話は聞き出すが、それをいつどの製品に同組み合わせて使うかはプロデューサーであるJobsだけに許されたのだ。

結論:Jobsは技術者が載せたい機能を載せない事で世の中に受け入れられるシンプルな商品を作りだした。だからこそ利益率が40%もある商品をリリースできるのだ。今回発表されたiPadを技術者の好きなようにさせて作っていたら1,000ドルもして何から何まで付いているお化けのような物になっていたのである。そんな使いこなせないようなもの誰も買うわけがないのだ。CESは3Dで盛り上がったみたいだが、それが必須(差別化のためだが、どこもそればかりなので何の差別化にもなっていない)だと思っているのはメーカーだけだとどうして気付かないのかが、私には不思議で仕方がないのである。技術力に自信があったら最後に出してくると思うんだけどな。

4 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

私は技術者に近いところにいますが、

今回の話、営業も一緒だと思ってます。お客さんの代弁をしてるとかいいますが、営業の言うことは、安く、小さく、性能アップくらいのものです。

iPodTouchのような新規製品は、「こういうものが欲しい」なんて言えるものではなく、お客さんにヒアリングしても半分は無駄だと思ってます。

技術者とか、営業とか、カテゴライズされてしまわないような人間が、一人で決めてしまうといいものができる確率は高い気がします。

G4 Cube Everlasting さんのコメント...

 貴重なコメントを頂きありがとうございます。

 確かに営業の人たちは自分たちでも理解できるもの以外は具体的な要望なんて持っていないものです。性能アップなんて言われても、速度なのか量なのか質なのか...

 マーケの人は直にお客さんの声なんて言いますが、それで変にニッチなものに焦点が当たっちゃたり

 技術者に任せるとメカニカルはデジタル時代に逆行しているのにBlu-rayを作ったり

 本当に必要なのは、半歩遅れの技術を使って1歩先を行くプロダクトに仕上げるプロデュース力なのではないでしょうか。それも、ばれない程度に小出しに...

 今のAppleはそういう会社なのだと思います。

Unknown さんのコメント...

ま~確かに技術者は、経営側にて~か・上目線で独走したりするよな~・比べて職人は、ユーザー側て~か下目線のユーザーだったりもするしな~・・背中の痒い所を掻くのに・この機械をお使いなさい!!と 何処が’痒いの何処掻くの・・ここ?・・てな事か?・・違う?

G4 Cube Everlasting さんのコメント...

 コメントを頂きありがとうございます。

 ご指摘頂いたように職人はユーザ視点でモノづくり、技術者は自己目線で...

 技術者か職人かは能力や技術ではなくモノづくりの視点の違いだと思います。

 職人ならユーザが喜ぶならローテクでもOKですが、技術者だとローテク使っただけで沽券に関わるなんて思っているのです。

 揚げ句は自分が作ったものが認められなかったりするとユーザがバカだからって...