金曜日, 6月 12, 2009

計画的陳腐化は陳腐な考え

 20世紀の物づくりや小売は顧客の持っている商品が陳腐であると実感させ、新製品に買い替えさせることで需要を掘り起こすビジネスモデルであった(日本のメーカーは残念ながら未だに20世紀で止まったままだ)。半年のサイクルでモデルチェンジ(物によっては3ヶ月)を繰返し、僅かな差だがハードウェア依存のため旧モデルでは不可能な機能を付け加える事によって買い替えサイクルを加速させると言うビジネスモデルである。国内のガラパゴスの中では、未だにバカのようにそれを繰り返している(それだってもう無理になりかけている)が、ケータイがスマートフォンの方に振れようとしている時代に時代錯誤も甚だしいのだ。実際この春のケータイは最悪の状態で予測の4割位しか売れなかったのだ(完全に飽和し終ったのだ)。もう陳腐化戦略は終っているのである。
 
 WWDCで発表されたiPhone 3.0やSnow Leopardは、陳腐化とは全く逆のベクトルを持っている。事情を良く知らない日本のケータイユーザからすれば、iPhone 3.0はiPhone 3G "S"の事だから既存ユーザには関係ない(20世紀のメーカーのビジネスはそうだったから)と勘違いしてしまうのだが、iPhone 3.0は既存のiPhoneたiPod touch全てに対して恩恵を与える機能強化が施されている。私の持っているtouchは発売初日に買った第1世代だが、iPhone OSを2.0にアップしたことによりBluetoothとスピーカーなどのハードを生かす機能を除けば第2世代となんら遜色が無いのである。そして、既にiPhone 3.0でのサポートも保証されている。つまりAppleのビジネスモデルは既存商品を陳腐化させることなく壊れて起動しなくなるその日まで使い込ませるものなのだ。Snow Leopardも既存のIntel製Macの性能が向上する(流石にPowerPCは捨てられたが、一番新しいものでも既に3年以上経過している)。Appleは全てに渡って陳腐化させないためのビジネスモデルを構築したのだ。

結論:ワンセグが無いとか地デジが見えないとか文句をいう連中がいるが、特定の機能しか与えられないハードウェアは陳腐化の原因である。そんなものを搭載しないからAppleの製品は陳腐化することが、他のメーカーと比べて少ないのだ。壊れてもいないのに買い替えさせるのと天寿を全うするその日まで最新の機能を堪能出来るのとどちらが、エコかは言うまでもないだろう。陳腐化は陳腐な考えと言うよりはバカな考えと言うべきだろう。

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