火曜日, 5月 04, 2010

Appleは何故クローズなエコシステムを構築するのか

 Flashの締め出しでFlashの開発者を怒らせ天敵となったApple。App Storeではクロスコンパイラで作成されたアプリさえ締め出そうとし、そのために米政府が独占禁止法の調査を行うとさえ噂されている。司法省と連邦取引委員会のどちらが調査を行うかの交渉が進んでいないために決定までにはまだ日数をようするようだが、Appleのデバイスだけで動作するアプリを開発するか、様々なOS上で使用出来るアプリを開発するかでどのツールを使うかを選択しなければいけないことが競争の妨げになるのかが焦点になるようである。
 
 iTunesを基盤としたエコシステムだけではなく、iAdやチップの設計会社、地図アプリ、音声認識技術、ストリーミングの企業を続けざまに買収し、自社のものとしてしているが、重要な基盤技術を他社に委ねる危険性を身をもって学んでいるから(それが原因で1997年に危うく倒産するところだった)である。
 
過去の失敗
PowerPC:Apple、Motorola、IBMによって共同開発されたチップだったがPCではApple以外に供給されなかったためにAppleの望む仕様のチップの開発は遅々として進まず、Intelの優位にあったのは僅かな期間に過ぎず、更にはMotorolaの離脱、IBMのcellへの注力によりAppleも撤退を決意する。PowerPCの将来を信じていなかったJobsはOSX開発時からIntel版を用意していたのは凄いことである。
CHARP:PowerPCを使用したオープン路線のハードウェア基盤をコンセプトに設計されたPC。AIX、NT、OS/2、Solaris、Mac OS、Netwareで稼働する予定だったがIBMがAIXやLinuxのシステムとして使っただけに終ってしまった。
OpenDoc:IBM(OS/2)、Novel(Windows)、Apple(Mac OS)の3社連合で開発され、マルチプラットホームで使えるDocument中心の操作を実現する技術だった(開発コードはBento。弁当のようにフレームの中に様々なオカズを配置してドキュメントを構成する)。仕様の統一に時間を浪費しただけではなくJavaの登場により必要性が無くなりNovelの退場、OS/2の断念で空中分解してしまう。最後までしがみついたAppleもOpenDocの前提となるCopland(失敗に終ったOS)の断念で終了となる。
MetroWorks:PowerPCへの移行時に自社で統合開発環境を完成出来なかったAppleは、アプリケーションの開発ツールを他社の技術に頼ると言う過ちを犯してしまう。それ以前の開発環境はシマンテックのThinkシリーズだったのだが、PowerPC用の統合開発環境を開発出来ないという混迷状態に陥り、Mac用のアプリケーションを作っていたベンダーがWindowsへと雪崩れ込む要因になってしまったのである。
Java:OSXへの移行に伴い開発社の取り込みを狙ってOSXでは、Javaを開発環境に統合したがサーバアプリには有効なJavaがコンシューマアプリでは足枷となる結果に終る。Javaを主導していたSunの業績不振でJavaそのものがメインストリームになることはなかった。

 過去の失敗を見れば解るように、他社の技術、共同開発はロクな結果になっていない。その原因は、過去のApple自身が何をやるかが見えていなかった(取りあえずみんなで渡ろうと言う考え)事に尽きるのだが、Jobs復帰以降のAppleは自社に必要な技術は自社に取り込み、他社の都合で商品開発に遅れが出るようなバカな戦略をとらないですむ体制の構築してきたのである。
 
 Quattro Wireless(ネット広告)、Siri(音声認識、AI)、Lala(ストリーミング)、P.A. Semi(チップ設計)、Intrinsity(チップ設計)、PlaceBase(マップ)。どこの企業もビッグネームとは言えないかも知れないがピカイチの技術を持っている(Jobs眼鏡に適った)。

結論:OSや基盤となるものを他者の手に委ね運命を翻弄される愚を二度と犯す気はないのである。Appleは、金儲けではなく自分たちの未来を自らの手で構築したいだけなのである。

0 件のコメント: