日曜日, 12月 11, 2005

暗い唄が聞こえる 〜第5章〜

 前回の例が良いか悪いかはこの際置いといて(無責任だ)、4畳半フォークと暗い唄の比較を続けてみたい。4畳半フォークのキーワードは小市民、苦学生、田舎者(ここらで頭に来た人は田舎者である)だが、暗い唄の範疇に入るキーワードは、廃人、ドロップアウト、田舎者(ここで頭に来た人は少しだけ暗い)である。どこがどう違うかと言えば、4畳半派は、不幸自慢のように常にどこかで媚を売っている(要するにかわいそうな振りをしている)のに対して、暗い唄派は、自慢にはならないくらいに暗く(同情の余地など入りようもない)、そして不快だ。要するに4畳半派の唄で少し涙を流すことによってカタルシス(私っていい人?気分)に浸れるが、暗い唄は涙を流してもカタルシスはやって来ない(救いがないとも言う)。中島みゆきのように同じくらい唄でも恋愛に関係しているものが多い(暗い4畳半と言える)。4畳半で問題になるのは物理的な広さであり、暗い唄は心理的な重さが問題なのだ。

 4畳半の不幸は金で解決出来るが、暗い唄は金では決して解決出来ない。そもために酒を飲む、薬を飲む、水を肺一杯飲む(一般には死ぬとも言う)などの方法で簡単明瞭に解決しているのだ。友情や愛情では埋めることの出来ない暗い闇を歌っているのが暗い唄であり、海が死んだり、山が死んだり(さだは死ぬと思っているらしい)してもらわないで、必ず君に死んでもらうことになるのである。

まだ理解出来ていないあなたのためのキーワードのおさらい

赤い手ぬぐい
4畳半:マフラーになる
暗い唄:首を吊る道具になる


4畳半:神田川(赤ちょうちんがある)、ショウロウが流れる
暗い唄:玉川上水(大宰の石碑がある)、君が浮かんでこない


4畳半:酔いつぶれるくらいに飲む(二日酔い)
暗い唄:体が潰れるくらいに飲む(肝硬変)

飲食店
4畳半:喫茶店(流れているのは学生街の喫茶店)
暗い唄:ジャズ喫茶(流れているのはチャーリー・パーカー)

恋愛
4畳半:片思い(告白出来ずに一生思い続ける)
暗い唄:無理心中(自分だけ生き残り一生供養し続ける)

電車
4畳半:飛び乗る(片思いの相手を追いかけて)
暗い唄:飛び込む(快速電車をめがけて)

天国
4畳半:先輩が行く所(お星さまになる)
暗い唄:ハイミナールで行く所(口が回らなくなる)

地獄
4畳半:失恋した時に行く所(地獄のような心の痛み)
暗い唄:薬が切れた時に行く所(地獄のような禁断症状)

一人称
4畳半:僕(男である)、わたし(女である)
暗い唄:僕(女である)、あたい(オカマかも知れない)

二人称
4畳半:君(女である)、あなた(男である)
暗い唄:君(男である)、あんた(オカマかも知れない)

うつろ
4畳半:心が虚ろになる(気もそぞろである)
暗い唄:視線が虚ろになる(薬か酒が原因である)

冷暖房設備
4畳半:こたつ
暗い唄:電熱器

ふるえ
4畳半:寒さか寂しさが原因(もう直抱きしめる)
暗い唄:禁断症状かマヒが原因(もう直息絶える)

結論:4畳半は物理的に測れる不幸を問題にしているが、暗い唄は心理的な不幸が問題になっている(ここでは恋愛のように有り触れた心理的葛藤は出てこない)。失恋して死んでしまうのは4畳半だが(理由がはっきりしている)、玉川上水で泳いでいた君が沈んでしまうのが暗い唄なのだ(自殺なのか事故なのかが判らないが死んだことは間違いない)。

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