月曜日, 7月 23, 2012
垂直統合と水平分散、その後
Microsoftが全盛の時代、気違い沙汰と言われていた垂直統合。そんなことをしてもオープン戦略に勝てるわけがないと誰もが信じていた。確かに、Microsoftのようにハードウェアを作らずにOSやアプリケーションののライセンスに徹していれば不良在庫を抱えることもなく一度製品が出来上がってしまえば、数が出れば出る程単純に利益が増える理想的なビジネスモデルだった。
対するAppleは創設以来基本は垂直統合(一時期ライセンスを試みたが明らかに失敗だった)。Mac vs WindowsでAppleが敗れ去ったのは現在のようなエコシステムを持たないMac単独の統合モデルだったからである。現在のAppleはiTunesを見ればわかるように決してクローズモデルをとっている訳ではない。iTunesで提供される音楽データはDRMなしのMP3。MP3をサポートしているプレイヤーであればどれでも再生可能だ。勿論、もうiPadに対抗できる音楽プレイヤーを持っているのはSONYだけだし、それなりの結果を出せているのはほぼ日本国内に限られている。自分達が圧倒的な力を持った分野だからこそ開放したとは言えるだろう。
iPhoneの四半期販売台数が2,000〜2,500万台と予想されているが、それ以上に驚きなのがApple以外の誰もが惨憺たる結果になっているタブレット市場でiPadは、既に2,000万台に達しようとしている。ここまでAppleが独走体制に入れたのは自社での製造を一切辞めてEMSに切り替えたから需要に応じた生産量の調整が柔軟に行えるためである。製造業で一番問題となる余剰在庫の発生を抑えながら需要に応える事が出来る盤石の体制だ。Appleが他社と比較にならない利益を上げているのは価格競争に巻き込まれないデバイスを売れるからだけではなく不良在庫を持っていないからなのだ。
そのAppleに対抗しMicrosoftとGoogleが自社でハードウェアまで作るろうと垂直統合戦略に切り替える気配を見せている。Appleの利益率に釣られたとしか思えない対応なのだが、彼らの目的は自社の持つサービスやアプリケーションを利用するための専用デバイスを増やしたいというAppleとは全然違う目的を持っている。それでAppleと同じ垂直統合のビジネスモデルが上手く行くかは甚だ疑問だ。
オプションも競争も選択肢も増えるはずの水平分散のビジネスモデルではAppleに勝てないと判断したのは進歩なのかもしれないが、30年以上を費やしてAppleが築き上げてきたビジネスモデルは一朝一夕では真似をできるものではない(現にSteveのいなかった時期に一度は破綻している)。
結論:水平分散のオープン戦略は、選択肢が多いのではなく混沌があるだけである。水平分散で幸せになれる人が限りなく少ない事が明らかになった(メーカーもユーザも幸せになっていない)今、GoogleやMicrosoftは統合型に舵を切ろうとしているが、それはその戦略に乗ってきたメーカにとっては裏切り以外の何物でもない。ライセンシーをEMSとする位の事をしない限り離反を止めることは出来ないだろう。GoogleやMicrosoftは果たしてそれを分かっているのだろうか。統合が更なる混沌を生み出すのが落ちなのだ。
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2 件のコメント:
サーフェイスやネクサスセブンがサードパーティーのタブレットよりずっと魅力的なのも確かで、サードパーティーがだらしないから自分たちでやろうと思ったのも分からなくはないです。
でも、おっしゃるようにサードパーティにとっては裏切りしか思いないでしょうね。
特にマイクロソフトなんかはコンセプトだけを公開してサードパーティーに自由に作ってもらうとか出来なかったのでしょうかね?
コメントを頂きありがとうございます。
MicrosoftはAndroidとは違い仕様もある程度コントロールされているので、わざわざ自社の名前で作る必要はなかったと思います。Nexus 7に関しては全く統制が効かないための苦し紛れに見えなくもないですが、そもそもOSのリリースをあまりにも頻繁に行ったのが、そもそもの原因。
やることなすこと自分勝手ですね。Googleに振り回されたメーカーは本当に良い面の皮だったと。利益が出せる製品ではないのですから、もうGoogleとは距離を置くべきだと思います。
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