月曜日, 1月 05, 2009

時価会計と簿価会計 〜追記〜

 更新が遅れましたが、本年も宜しくお願いいたします。

 随分前に書いた”時価会計と簿価会計”にコメントを頂く事があり恐縮するばかりです。教えてgooなどでも参考リンクとして挙げて頂いているからなのでしょうが、経済の専門家でもない人間が自分の思いだけで書いてしまった文章がgoogleなどでヒットするというのは責任重大だなと思う今日この頃です。以前書かせて頂いたのは単純化した時価と簿価の説明だったのですが、今回はその補足というか心構えみたいな部分を追記したいと思います。

 日本では長い間土地を担保に銀行から融資を受ける間接金融以外に資金を調達する方法がありませんでした(全く無かった訳ではありませんが殆ど機能していませんでした)。バブル崩壊で土地神話が崩れた時に資金を手だてする方法として直接金融(株式の公開)が広まりましたが、不動産資産の無い企業(新興企業)がより多くの資金を得る新たな担保として金融商品(株式などの債券)を組み込んだのですが、変動の大きな時価会計を取れば実績の無い新興企業でも利益を確保出来るという現実がありました。

 一方的に時価会計を悪いとは言いたくはなかったのですが、”時価会計と簿価会計”を書いた当時は「時価会計が正しく、簿価会計は間違っている」と言う上っ面な世論があった為に時価会計を批判するために書かせて頂きました。

 金融市場が右肩上がりであれば、時価会計は打ち出の小槌の役目を果たしてくれるために、事業資金を得る手段として有効に機能しますが、いつしか目的と手段が逆転し、本業で上げられない利益を得る短期的な手段であるべき時価会計による利益確保がいつしか本業化してしまう大きな落とし穴が隠されていることを忘れてしまえば、サブプライムに見られるような博奕に現を抜かす企業倫理の崩壊だったのです。

 そもそも時価会計をとる企業には簿価会計をとる企業よりも強い自制心(倫理観)が必要です。マネーゲームが博奕だと言う事を分かった上で融資で得られない資金を得るためにとる場合にだけ許される会計手段と考えるべきです。目的の事業資金を得たところでマネーゲームは手仕舞いし、本業に打ち込むべきなのですが、お金には魔力があるためにそこから抜け出す事は容易ではありません。為替のオプションも利益を出すではなく、利益を失わないためのヘッジ(それが本来の姿)の手段としてだけ使うべきなのに、どこかの大企業のように為替差益だけで数兆円も利益が得られるとなれば、手を出さずにはいられなくなってしまうのです。

 ヘッジだけを心がけていれば円安だ円高だと大騒ぎするような醜態を曝す事などは決して無いのです。

結論:健全な財務体質であれば時価であろうが簿価であろうがびくともしません。時価会計の問題点はマネーゲームに現を抜かしてしまい、簿価会計の問題点は資産の切り売りで食いつなごうという安易な方向に流れてしまう事にあるのです。本業を蔑ろにすることが問題の本質なのです。

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