木曜日, 2月 01, 2018

モノよりコト

AppleをDisりたい人たちが常套句にするのが「時代はモノではなくコトが重要」の一言。そんな事はこちらは百も承知なのだがAppleはモノの会社であってコトの会社ではないと宣われると、こいつ大丈夫かと余計な心配をして上げなければいけないことになる。Appleはモノで大きく儲けているがそれを成り立たせているのはApp Storeなどの自社のデバイス全てを包含するエコシステムの存在。単にハードウェアを高く売ってぼったくっているわけではない。iPhoneを販売する以前に音楽ダウロード市場でAppleが圧倒的な存在となった時にエコシステムを作れなかったSONYやMicrosoft、当時はまだPC業界のトップだったDellはもうこれでAppleに負けたと散々書いた。

Appleはコトがないと言っている人たちの多くはコトをクラウドの事だと思っている。Microsoftも今はクラウドに力をいれているが、バルマーの時代はソフトウェアがコトだと勘違いしていた。そして多くのPCメーカーはモノだけで自らサービスを作り上げる事ができなかったが、それはユーザーが他のメーカーに流れることのないコトを作る能力がなかったからなのだ。

MicrosoftにはOSやOfficeソフトは作れたがAppleに勝てるハードとサービスを作る才能がなかった。ライセンスによって自社のソフトウェアに縛り付けることまでは出来たが2回に1度の割合で使い物にならないOSをリリースしたためにその絶大的だったはずの求心力(人質ビジネス)は相当落ちていた。彼らが勘違いしていたのはWindowsやOfficeのシェアが巨大だったのは好きだからではなく仕方がないからという事実。複数台のPCを家に置くなど余程の物好きでなければしないので趣味の世界のMacが入り込む余地はほとんどなかっただけの話なのだ。だから全く違うジャンルの製品ならばMicrosoft製である必要はなくまんまとiPodがWindowsしかない家庭に入り込むことができたのだ。そして、iTunes Storeの登場。結局iPodと互換性のないフォーマットの音楽ファイルを販売するミュージックストアではコトを作ることが出来ずそれに対応した専用プレイヤーも当然売れることはなかった。

そしてiPhoneの登場である。iPhoneによってITの主戦場がわずか数年で変わってしまった。なまじポケットに入るサイズの出来損ないPC携帯を作った経験があったMicrosoftは他の携帯メーカー同様にiPhoneなど全く売れるわけがないと思い込み本物のスマホを作るのに出遅れた。その上人質ビジネスに慣れきってしまったためにスマホでもOfficeが動けば良いと言う過信からAndroidにも遅れをとる結果になってしまった。Microsoft同様にOSをライセンスしたAndroidは陣営はApple以外のメーカーの取り込みに成功し台数レベルではiPhoneなど足元にも及ばないシェアを作り上げることに成功したがOSもサービスも人任せだったのでAndroidの中でオンリーワンになるメーカーは出てこなかった。Samsungがシェアで一番かもしれないがSamsungの端末以外は考えられないと言うサービスは未だに持っていない。ナンバーワンは常に入れ替わるものなのだ。

具体的にコトの話をしていないと言われそうだがAppleの築き上げた生態系そのものがAppleのコト。一般の家電製品も自動車も作ることはないだろうがPCからイヤホンまでのフルラインナップ(スマートグラスはまだないが)を揃えているのはAppleだけで、よく比較されるAmazon、Google、Microsoftのどこにもない。最近はスマートスピーカーが話題なのでAmazon Echoがどれだけ売れたと騒がれているせいかまるで世の中全てがAlexaやGoogle Assistant、Cortanaで動いていると勘違いされているがインストールベースで考えればMacからイヤホンまで標準搭載されているSiriを超える音声アシスタントはない。

SiriなんてAlexaやGoogle Assistantと比べたら問題外だと鼻で笑う人もいるだろうが、あれだけGoogleが力を入れていたTango ProjectがiOSにAirKitが入っただけで打ち切りになったのと同じように一夜にして勢力図が変わる潜在能力を秘めているのだ。それはApple製品は全て同じエコシステムの中にありインストールベースが他者と比べて桁違いに大きいと言うアドバンテージを持つからなのだ。GoogleやMicrosoftはOSのライセンスという戦略によって短期間に勢力を伸ばすことはできたがハードウェアとOSのバージョンのコントロールが出来ない生態系を自ら作り出してしまった。GoogleがPixelを作り、MicrosoftがSurfaceを作るのは核となるハードを持った生態系がないといずれダメになると気付いたからだ。Androidからルービンが去りMicrosoftからバルマーが去ってようやく21世紀のボジネスはどうあるべきかが分かったのだ。

結論:コトとはどんなに広い範囲をカバーしていようとも単一のサービスで成り立つものではない。Officeを超えるアプリが出てくればいずれ乗り換えられるようにGoogleを超えるサービスが登場すればユーザーは間違いなくそちらに乗り換える。コトとはまさにそこから逃れられない生態系を作り上げることなのである。

1 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

その通りだと思います。ひとつひとつも割と良いですが、生態系としてAppleは素晴らしいですね。
先日GoogleがHTCの社員を引き受けましたね。やっていることが若干ちぐはぐな感じですね。